IT業界のトレンドキーワードに隠された思惑

システム関連の仕事を始めて30年以上経ちます。システム関連ではいつまで経っても学ぶことばかりで、時代に遅れないように常に努力しています。今やシステム無しに業務継続はできない状況になっています。

ファッションと同じように、流行りのワードを使うとなんとなく優越感を感じるのでしょうか。特に経営層はよく使います。社内システム管理者の中には、「上司からDXしなさいと言われましたがどうしたらいいでしょうか」と困っている方もいました。社内に「DX推進課」などを設置する会社もありましたが、今はすでに解体されています。


DXはシステム業界浮揚対策として利用されたように思います。システム営業では「とにかくDXワードを使え」などと指示をして営業展開をします。金融機関のDX融資、IT補助金など様々な施策が行われていますが、景気浮揚対策の一部と捉えています。しかし現場では、従来から使用しているシステムから変更することはオペレーションの変更など生産性の低下が発生し、新システム入れ替え後に後悔するケースも少なくありません。ある業界では、システムへの過剰投資で会社が終わってしまうケースもありました。

2010年頃盛んに使われたクラウドも、落ち着いて考えたらクラウドは向き不向きのシステムがあることに気づき、次にはハイブリッドクラウド、今ではオンプレミスでもいいのでは無いかと言う時代になっています。自動車業界のEVシフトのように見えます。自社システムのクラウド化にはコストがかかる上に、セキュリティ対策、冗長化、運用保守費などを入れるとそれなりの会社規模が必要です。身の丈にあったシステムで継続して利益を出すことが大切だと思います。

在庫カードの電子化

食肉卸における在庫管理の課題と電子化の難しさ

食肉卸業では、同じ品名でも仕入先や仕入価格が異なるケースがほとんどです。そのため、ショートプレートなど商品名は同じでも社内ロットを付与して個別に管理する必要があります。システム画面ではショートプレートがいくつも表示されます、営業担当者は利益によって評価されるため、仕入価格の低いロットを探して引当を行う傾向があります。

2000年ごろ以降では、システムの進化により深夜のバッチ処理ではなく、すべてリアルタイムで処理されるようになりました。つまり、売上を入力すれば在庫がリアルタイムで減る仕組みです。それゆえ一日数千行の処理を行う大企業では、データベースにオラクルを使用するケースもあります。

先日、システム説明のためにとある会社を訪問した時に「リアルタイム更新は可能ですか?」という質問を受けました。システム自体はリアルタイム更新に対応していますが、運用に時間がかかるケースが多いことを説明しました。これは、商売成立からシステムへの入力までにタイムラグが生じることを意味します。商売成立、外冷手配、配送便手配、確認書送付、納品書発行など、多くの手順を経るため、このタイムラグを解決しない限り、どんなシステムを導入しても結果は同じです。

在庫カード

在庫カード電子化の現状と課題

在庫カードの電子化は、食肉卸業界にとって解決できそうでできていない難しい課題です。最も早いタイミングである商売成立時点で即時入力を行い、システムからケースのみを在庫から引き当て、その後確定重量や単価などの情報を入力して納品書などを発行する方法も考えられます。しかし、現状では商売成立から数日後に入力依頼が上がってくるケース、先入れ先出しで無く仕入単価の安いロットを指定してくるケースなどこのような運用では到底在庫カードの電子化は難しいでしょう。

システム構築のポイント

システム構築には、会社の規模も重要な要素となります。全国に支店、出張所、関係会社があるような会社でも、得意先がエリア区分されている場合は、紙ベースの在庫カードで十分対応可能です。システム構築には費用がかかりますので、システム管理者は自社のニーズをよく調査した上で依頼する必要があります。

結論

運用の問題をシステムで解決することは重要ですが、根本的な解決には営業担当者による商売成立時の即時入力の徹底が不可欠です。この徹底が実現できれば、在庫カード(引当原票)の電子化も見えてくるでしょう。