インボイス制度、電子帳票保存法への対応

2023年10月からインボイス制度が始まります。販売管理システムでは変更点が多く開始までに対応できるかどうかと言う状況です。販売管理システムは各社まちまちで各システム開発会社にカスタマイズを依頼することになります。

この食肉卸向け販売管理システム導入企業ではインボイス制度対応以外にも電子帳票保存法対応機能が追加されています。中には電子請求、運送会社オンライン、冷蔵庫オンライン機能を搭載した企業もあり各社どこまで開発するかとなるのですが食肉業界全体ではなるべく必要最低限の対応で済まそうと言うのが現状です。

インボイス制度

T番号の管理、納品書、請求書、買掛残高、売掛残高、勘定系への連携など国税のインボイス制度のFAQを見ながら要件を整理していくのですがそのFAQが更新されたりするので柔軟に対応しています。この販売管理システム上の取引先で免税事業者はほとんどありませんが割り戻し、返品時の請求書の処理など細かくFAQに記載されていますので対応せざるを得ません。一方現場ではまれに内容を理解していない取引先から自社の解釈で変更を要請される文書も送付されてきます。そこで各社顧問税理士や会計事務所に確認して要件定義を行っています。

税務調査に立ち会ったことがありますが新しい制度はパソコン上で全てが検索できる状況を目指しているようです。帳簿類は7年、帳票類は5年保存は取引単価の低い食品業界では膨大な量になります、電子帳票保存法機能を搭載するコストと天秤にかけるのですがその会社の経営状況によりどこまで対応するかという状況です。

システムの操作ログ

今でこそ少なくなりましたが食肉業界では産地偽装、賞味期限改ざん、社内での横領などさまざまな不正行為がありました。最近では退職した社員から時間外賃金の請求訴訟など様々な問題が発生しています。この業界のシステム監査では産地偽装、賞味期限改ざんができないシステムかどうか調査されます、上場企業に中には「ワンライティング」で一度入力したら変更できない仕様になっている会社もあります。

不正防止対策をすればするほど可用性が損なわれ「使いにくいシステム」と言われますので会社、規模によって調整が必要になります。このシステムにはメニューごとにアクセス権の設定、パスワード使用履歴、システム操作履歴を搭載していますので誰がいつ何をしたのかを確認することができます、またこのデータは変更削除は一切できないようになっていますので証拠として裁判などに提出可能です。この機能は使用している会社の上場審査時に監査法人から指摘され実装しました、標準機能として実装しています。確認できるのは初期値で管理者のみです。セキュリティでもそうですが可用性と制御・制限との調整が重要になります。

IT化によって増えたデータ連携依頼

食肉卸会社には仕入先、販売先、運送会社、営業冷蔵庫からデータ連携の依頼があります、それなりの取引規模になると効率を考えてFAXや電話からデータ連携の相談が増えます。

商談

ただ食品卸会社は薄利多売のために処理数が多く慎重に検討する必要があります。大口の販売先から「当社のWEBシステムを利用してくれ」と言われると人的リソースを割り当てて利用するしかありません。次に営業冷蔵庫とは規模によりますが自社冷蔵庫と同じようにデータ連携をするとメリットがあります。

自社が買い主、依頼主にあたる仕入先、運送会社とはメリットが無い限りデータ連携をしません。仕入先から「新しいシステムにしたのでこれで発注して欲しい」と言う提案には「検討する」と一旦受けるでしょうがメリットが無ければ拒否することになります。最後に運送会社とは発注時の手間削減の可否がポイントで宅配便など処理数が多い場合は連携した方がメリットがあります、ヤマト、佐川などの宅配便の会社は専用のシステムや発注書などを無償提供し自社のシステム等と連携しています、最近IT化が進んでいる一般の運送会社とは未だにFAX、電話による依頼が中心です。この販売管理システムでは運送会社様の入力軽減のためにQRコードをFAX用紙に印字するオプションがあります。読み込みシステムは運送会社のシステム側で作成する必要があります。

与信管理機能の開発

商売が現金取引でしたら問題は無いのですが、継続した取引の場合1ヶ月分などをまとめて後日振込などで代金を受け取ります。振込までの期間は取引先を信用して商売をすることになります。この期間の取引総額の上限を与信限度額として設定しその範囲で商売を行います。相手を信用して納品するわけですので信用を供与することになります。

食肉業界は利益率の低い商売と言われていますので与信事故が起こると被害は甚大ですので大手食肉商社からの仕入は審査部などを設置して口座を開くことすら容易では無く、現金取引から開始し、供託金などを納入して信用を積んでやっと与信限度額が提示されます。一方、中小業者の販売の場合はある程度リスクを承知でも商売をしなくては成り立ちません、コロナウイルス感染拡大影響による倒産のニュースを聞くと連鎖して影響受ける会社の事が気になります・・・

この販売管理システムでは債権債務の一元管理機能を搭載していますので与信管理機能と連動して様々な機能があります。一元管理のメリットはリアルタイムで売掛、買掛残高算出機能(債権債務管理機能)によって動作する警告アラート、入力制限、相殺反映の有無などの管理が可能になっています。

中小の会社では与信管理は社長の仕事と言えるかも知れません、融資を依頼するのも社長、最近では少なくなってきましたが個人保証するのも社長です、そのために自社の債権債務をリアルタイムで見える化することが重要と思います。この機能は開発時に過去の自分の個人保証経験を踏まえて設計しました。

二重入力の解消に向けた取り組み

食肉会社で今なお多くの会社で経理と営業、販売部門との間で二重入力が発生しています、また営業、販売部門でも仕入と売上で同じ内容を何度も入力する作業が行われています。この販売管理システムでは徹底した二重入力解消を目指して改修して仕入、売上では「取引伝票入力」と言う仕入と売上が同じ行で処理できる仕組みを開発しました。ロット番号、商品名、ブランド、規格、個体識別番号、原料原産地、賞味期限、ケース数、重量などは一度の入力で仕入と売上に反映される仕組みです。

債権債務の管理では入金、支払い処理、消し込み処理を一元管理して勘定奉行などの経理系ソフトへ連携が可能で、二重入力の必要はありません。入出金消し込み処理後の債権債務残高は最新の状況で銀行別の支払い予定、入金予定表なども出力できます。どこまで管理するかによりますが標準で上記の機能を搭載しています。一元管理は必要な時に正確な情報を把握できるというメリットがあります。この業界ではエクセルとの二重入力解消ができていない会社は多く改善が望まれます。